マザーボード交換時のPCスペックへの影響を検証【H→Zシリーズマザーボードへ】
メインPCをCPU交換(Celeron G4930T→Core i3 8100)によって事務作業は全く不満なく行えるスペックになりました。
※最新Intelが第13世代とか言っている間に、こちらはギリギリWindows 11サポートの第8世代を中古でパワーアップ中。
最近はノートPCでも可能な作業は多いですが、家で腰を据えて作業する際に拡張性やスペックの高いデスクトップはやっぱり強いです。
ということで今回の本題は「マザーボードの交換」です。とにかくマニアックなネタとなっています。
マザーボード変更によるスペックアップ
今回マザーボードを「H310」→「Z390」への大幅アップデートを行ってみました。若干MSI製が小さいですが同じMicro ATX規格です。
正確には「MSI H310M PRO-VH PLUS」から「ASUS TUF Z390M-PRO GAMING」へと変更しました。
300番台Intelマザーボードは、第8・9世代CPUが載るマザーボードで、H310が最安エントリーグレードとなります。
H310→B360→H370→Z370(Z390)というようにグレードが上がります。Z390は第9世代Intel CPU登場後にリリースされたモデルです。
ちなみに現時点最新の13世代Intel用マザーボードは700番台のマザーボードが使われます。(Z790が最上位)
そしてHx10~Zx90という表記のルールは基本変わりません。
チップセットの違い
最下位のマザーボードと最上位のマザーボードで何が違うのかということですが、事細かにいろいろ変わってきます。
エントリーグレードのマザーボードはCPUを動作させる電源回路周り(VRMフェーズ)が弱めの設計になっています。
第8・9世代用のH310マザーボードは「H310チップセット」を搭載しており、基本的には同世代のCPUを動かすことは可能です。
しかし、H310などは、Core i7やi9というハイグレードなCPUには不向きで、K付きモデルでオーバークロックを行いたいならZシリーズのチップセットが要求されます。
特に最近ではi7やi9に限らず、i5のK付きモデルなども安いマザーボードではちょっと不安で性能に影響を与えてしまいます。
結局のところ上位のマザーボード(Zシリーズなど)はハイスペックなCPU(消費電量や発熱が非常に多い)に対応した設計となっているわけです。
逆にCeleronやCore i3などのエントリーグレードCPUであれば「Z390チップセット」などのハイグレードなマザーボードはオーバースペックで「H310などでも問題ない」のです。
では「弱いCPUで最強のマザーボードに交換しても全く無意味なのか?」というと、そうでもないです。
Z390でも20種類以上ある
今回H310からZ390へ交換しました、と言ってもそれはチップセットの話だけで、実際にはH310でもZ390でも非常に多くのモデルが出ています。
有名メーカーではAsLock、ASUS、MSI、GIGABITEなどが各チップセットごとにさらに数種類のマザーボードを販売します。
そのおかげで、Z390チップセットを積んだマザーボードで20種類を超えるバリエーションがあるのです。
チップセットの種類は大まかな性能を表しますが、各製品はブランドやモデルごとに特徴が異なり、それらもマザーボード選びを楽しくも混沌としたものに変えています。
「ASUS TUF Z390M-PRO GAMING」
今回は、ASUSの「TUF Z390M-PRO GAMING」を入手できたので、交換していきます。Z390チップセットの中でも主にゲーム用にチューニングされたマザーボードとなります。
これまで付けていた「MSI H310M PRO-VH PLUS」と「ASUS TUF Z390M-PRO GAMING」の違いはざっと以下の点となります。
- CPUオーバークロックへの対応(K付モデル)
- メモリスロット:2→4本
- オーバークロックメモリへの対応(最大DDR4 4266 OC)
- マルチGPUへの対応
- NVMe M.2 SSDへの対応(2スロット)
- Raid構成が可能
- USBポート等が増加(USB 3.1 Gen2が搭載)
- RGB(Aura Sync)への対応
などなどと大幅に機能が向上します。
実際に性能面で向上するのは、CPUへ電力を供給するVRMフェーズ周りの強さや、メモリ速度などでしょう。
そしてMSIのH310にはM.2スロットが無かったですが、ASUS TUF Z390M-PRO GAMINGには2つも空きがあります。
つまりは、最廉価マザーボードからのスペックアップは機能面、性能面両方で生じるわけです。
ただ「CPU交換」や「ストレージをHDDからSSDに変更」ほどの大きな変化は無いです。
おそらく最も動作に影響するのはストレージのHDD→SSDへの変更で。これは体感差で10倍くらいのスピードアップを感じます。
しかし、マザーボードはどちらかといえば信頼性・耐久性の向上だったり、機能面で優れているかどうかが問われます。
今回は実際にマザーボードだけを交換してスペックの変化などを検証します。ちなみにメーカーがMSIからASUSに変わっているなどもあるので参考程度の記録となります。
PCの構成
- CPU:Intel Core i3-8100
- メモリ:DDR4-3200(定格2400MHz)
- ストレージ:256GB SSD(シリコンパワー製)
- グラフィックボード:GTX 1060 6GB
- 電源:Antec 550W ブロンズ
以上のようなエントリーグレードのPCのマザーボードをいきなり最上位のものに交換していきます。
マザーボード交換による変化
実際にマザーボードだけを変更して変わる部分というと入出力端子とか、オーバークロックに対応しているかどうか程度かなと思っていましたがそうでもありません。
起動速度が上昇(環境次第)
平均起動時間 25秒→20秒
まず、起動速度が上昇しました。MSI H310 では比較的ロゴが出るまでに時間がかかっていましたが、ASUS Z390ではロゴの登場までが5秒くらい速かったです。
この点を、BTOビルダー先輩にも聞いたところ「マザーボードメーカーでの違いも大きいのでは?」という意見をいただきました。
ということで起動時間の違いは、純粋にマザーボードの質も影響はあるかもですが、メーカーの違いによるところも考慮しないといけないです。
一概にASUSが速いとかいうわけでも無さそうで、どの時代のどのクラスのマザーボードかによっても異なるようです…難しいですね。
とにかく私の環境で何度も計測して、起動時間は5秒ほど短縮されたのが検証結果の一つです。(どちらも周辺機器はマウスとキーボードのみの最小構成)
機能を増やすほどに起動時間は伸びていく方向になるので、多機能なハイスペックマザーボードでいろいろと周辺機器を繋ぐと起動が遅くなるパターンもあるようです。
メモリのオーバークロック(自動)
メモリはシリコンパワーのメモリ16GB(DDR4-3200MHz)を搭載してテストしていました。
MSI H310ではi3‐8100の定格動作速度の2400MHzでした。基本的にはメモリクロックはCPUの定格動作クロックに合わせて動くらしいのです。
しかし、Z390に変えるとメモリ本来の定格クロックである3200MHzで自動的に動作しました。
BIOS上でも3200MHzと認識している |
調査したところ、マザーボードによって対応するクロックまで上昇させて動かすことができるようです。(IntelではZ系マザー)
ちなみにTUF Z390M-PRO GAMINGでは定格2666MHzが最大で、それ以上はOC(オーバークロック)という表記となります。
そして今回のように定格3200MHz対応のメモリをZ390マザーボードで使えば「メモリのオーバークロック」となるようです(諸説あり)。
そして検証していくと…
なんというか、ほとんど私の感覚ですが3200MHzでは少々不安定な印象を受けました。i3-8100の定格は2400MHzなので、800MHzアップさせているので結構無理させてる?
その後交換したSamsungの2666MHzの方が全体的に安定している感がありました。下手にクロックアップするよりも、定格の範囲内での安定動作が無難で良い雰囲気です。
メモリ関係をまとめると…CPUとマザーボードの対応メモリの範囲内で、JEDEC標準規格にネイティブ対応したメモリを選択するのが問題が起こりにくいのは間違いないようです。
私の環境では最大で2666MHzまでにしておくのが無難ということになります。DDR4でIntel環境なら2666MHzが一つの指標となるみたいですね。
ちなみに、メモリクロックの差が表れるのは以下のような状況下くらいなので、事務作業でそこまで大きな変化は無いです。
- ハイエンドなグラフィックボードやモニターを利用時
- 動画エンコードや計算処理
- CPUに「AMD Ryzen」を使う場合
ベンチマークの向上
マザーボード以外はほとんど変えず(メモリクロックが2400→2666)で、ベンチマークスコア(CINEBENCH R23)が1割ほど上昇しました。
H310での結果 |
Z390での結果 |
スコアはマルチが3300→3600、シングルが920→960へと上昇。
CINEBENCHのスコアはメモリの影響をそれほど受けないベンチマークのはずなので、メモリクロック以外の面でも影響を与えた可能性はあります。
例えば電源のフェーズ数は1.5倍くらいですし、非常に安定した電源供給がなされること、各パーツの連携もハイエンドなだけあり高速なのか?
とにかく、体感速度はそこまで変わりませんが、ベンチマークテストの結果的には1割程度の性能向上が生じています。
もっとハイスペックで高温になるCPUではマザーボードの性能差が大きく出るのですが、i3でも多少影響あるのかも(メモリクロックは上昇していますし)。
このあたりは組み合わせるパーツ次第で結構差がある部分なので「マザーボードの変更でスペックアップもあり得る」くらいのイメージでしょうか。
ポート類が増加
上位のチップセットでは、入出力端子、USBや映像音声用ポートなどが豊富になります。
数だけではなく、より上位の規格に対応している場合も多いです。たとえば今回のTUF Z390M-PRO GamingはUSB 3.1 Gen2ポートが搭載されています。
USB規格もカオスな表記となっていますが、末尾にGen2と付いていると通常のUSB3.0の2倍の転送速度に対応します。(もちろん相手側も対応している必要あり)
他にも、Wi-Fiモデルの場合はWi-Fiカードさえ追加すればすぐにWi-FiとBluetoothに対応できる機構になっていたりしますね。
RGBについて
TUF Gamingというだけあり、RGB用端子が2つ付いています。しかし、ARGB(アドレサブルRGB)ではなく通常のRGB。
このあたりはややこしくて、最近のARGB端子は3ピンで5Vが主流になっています。
TUF Z390M-PRO Gamingでは少し古い規格の4ピン・12Vの端子が2つ備わっています。この3ピンと4ピンは互換性が無く、差し違えると故障の恐れもあるので注意ですね。
以前に購入したARGBファンはこのマザーボードでは真価を発揮できない仕様でした。最近のモデルは5V3ピンという規格にほぼ統一されていますね。
SATA→NVMe M.2 SSDへの変更
MSI H310ではSATA接続しかできなかったストレージですが、Z390はM.2スロットが搭載されています。
ということでNVMe M.2接続のSSDに変更してみます。同じシリコンパワー製の256GBのSSDでテストしています。
基本的にはM.2 NVMe SSDに変更しても、大容量のファイル移動やインストールなどが無いとその違いはなかなか実感できないですね。
ただ、現在ではSATAでもM.2 NVMeでもそれほど金額が変わらないので、マザーボードが対応しているなら素直にM.2 NVMe SSDを選ぶのがいいと思います。
M.2 NVMe SSDはPCIe3.0なのか4.0なのか、はたまた容量やブランドによってかなり速度差が出ます。
正直、SATA接続でも体感速度は変わらないレベルなので、大容量のファイル保存(動画やゲームなどのデータ)を頻繁に行わないなら高額なSSDを選ぶ必要性は低いと思います。
ベンチマーク結果は確かに何倍も速かったりしますが、実際にそこまでの変化はないんですよね。数十GB以上のファイルの読み書きを頻繁に行った時に実感できる感じです。
地味にコスパの良い比較的有名メーカーのシリコンパワー製M.2 SSDは、超高速ではないですが普段使いにおすすめですね。
まとめ
マザーボードをMSI H310M PRO-VH PLUSから、Z390M-PRO GAMINGへとスペックアップした検証をしてみました。
正直、ここまでいろいろと変化があるとは思いませんでした。さすがは最上位「Z」グレードのチップセット。
拡張性アップだけでなく、起動速度やベンチマーク上の性能向上、メモリの自動クロックアップなどの効果は上位マザーボードならではといったところでした。
ZシリーズではK付きのCPUオーバークロックという玄人向けの機能もあるので試したくなってしまうのが怖いところですね。
追記(2024年3月)
その後、メインPCはRyzen 5000番台へのアップグレードを行いました。Ryzen第4世代マザーボードとCPUのコストパフォーマンスは圧倒的に高いですね。